映画「アナザー・カントリー」エリート学生たちの儚い青春｜配信で無料視聴可能

こんにちは。
実写BL・メンズロマンスが大好きなアラサー会社員のricoと申します。

数ある作品の中から大人女性にもきちんとおすすめできる良作のみをピックアップしていたら、130本を超えてしまいました。
ひたすら個人的な見どころをご紹介していくブログです。(特に激推しな13作品はこちら)

今回は映画「アナザー・カントリー（原題：Another Country）」を取り上げます。

まだ見たことがない方のために詳細を省いた「見どころのみ」をかいつまんでご紹介しますが、3割ほどネタバレを含みますのでご注意ください。

映画「アナザー・カントリーとは

「アナザー・カントリー（原題：Another Country）」は、舞台劇を原作とした映画で、1984年に公開された作品です。

1983年、モスクワ。
アメリカ人ジャーナリストがガイ・ベネットの自宅に訪れ、祖国イギリスを裏切りスパイになり、ロシアに亡命した理由についてインタビューする。
ガイはパブリックスクールの頃の話を語り始める。

「アナザー・カントリー」あらすじより

1930年代の全寮制パブリックスクールを舞台に、同性愛や政治思想に傾倒していくエリート学生たちが描かれています。
80年代に公開された古い作品ですが、メンズロマンスを語るうえで抑えておきたい名作といえる存在感（神々しい）。

クリケットのユニフォーム、くたびれたモーニングコート、ツイードのジャケット、ストライプのシルクタイなどクラシカルな英国ファッションも合わせてお耽美な世界感にどっぷり浸ってふやふやになりましたよ。

…おしゃれや

将来を約束された特権階級のエリート学生たちが、ぎちぎちに縛られた閉鎖的な世界でそれぞれの自由のためにもがき苦しむというおはなし。

主人公は実在したイギリス人スパイ。
後に祖国イギリスを裏切り、ロシア側のスパイになった彼が、なぜもう一つの故郷（アナザー・カントリー）であるイギリスを捨てたのか、その要因とも言える彼の学生時代を回想し、語り始めるところから物語は始まります。

切なくて儚くて美しい名作

国宝級の美青年たち

ガイ・ベネット（演：ルパート・エヴェレット）

特権階級に生まれる青年。
エリートだらけの全寮制学校に通う。
保守的で閉鎖的なイギリス社会に疑問と怒りが絶えずやりきれない。
恋愛に奔放で禁止されているにもかかわらず学内で男をとっかえひっかえしている。

待って誰この美男子…というのが初見の感想です。
昭和の少女漫画から飛び出してきたようなお顔立ちにため息が止まらんとです。
いつどんなときでもいかなる角度からのショットでも常に絵画。

模写したくなる美しさ

トミー・ジャッド（演：コリン・ファース）

異端児ガイの唯一の親友。
レーニンを愛する共産主義思想のインテリ学生。
毎晩生徒会長の目を盗んで政治の勉強をしてる。
誰とも群れず常に冷静なクールガイ。ああカッコいい。

今作がコリン・ファースにとってのデビュー作。
とは到底思えないほどの自然な演技力で驚きます。
今のコリン・ファースがタイムスリップして演技してるみたいな貫禄があります。

結婚してくれ

ジェームズ・ハーコート（演：ケイリー・エルウィス）

恋愛体質なガイに見初められた新しいボーイフレンド。
ガイとは寮が違うため、夜中に皆の目を盗んで寮を抜け出し、ボートの中でこっそり逢引きを繰り返す。

年上のガイに甘える姿が超絶可愛いわんこ。

主人公が味わう大いなる挫折

主人公のガイは特権階級の子孫。
だから学内で最も地位の高い「生徒会長」に選ばれることが約束されているんです。
生徒会長といっても私たちの思い描くようなレベルのものではなくて、会長になれば、卒業後は外交官など政界官僚への出世も確実と言われる程大きな特典があるので、みんな必死になってその座を狙ってるんです。

ガイからその権利を奪おうと学内の派閥間でドロ沼の足の引っ張り合いが巻き起こります。

当時のイギリス社会で男性同士の恋愛はご法度。
それでも自由を愛するガイはそんな閉鎖的な社会に反抗するかのように、学内でタイプな学生を見かけたらすぐにアプローチして関係をもっちゃうようなオープンな生き方をしていました。

そこに目を付けたライバルたちはガイを会長候補から引きずり降ろそうと、彼の性的思考を引き合いに、皆の前で証拠を見せつけつるし上げるんですね…

自分の性的趣向が原因で約束されていた将来の道を絶たれたガイは、社会の圧力に屈し絶望します。
この絶望が後に祖国を裏切り敵国のスパイになるガイに大きな影響を与えることになります。

悔しい。切ない。

まるでフェルメールの作品のような光と影の陰影がとっても美しいんです。
このふたりの絵ハガキほしい。

ガイの虚無顔に吸い込まれる

自分の性的思考を自覚しながら、それが社会に受け入れられず世の中からの疎外感を味わうガイ。
生まれも裕福で将来も約束されているのに、少数派を良しとしない排他的な社会にも、差別的な思考がはびこる閉鎖的な学校にも、すべてに嫌気がさして彼の頭は常に怒りや疑問でいっぱいなんですよね。

複雑な感情と闘いながらもがくガイが時より見せるこの空虚な表情がさ…
切なくて儚いんです。

見てよこの表情…

ギュってしてあげたくなるくらいやりきれない顔するんですよね。

親友のトニーという男

そんな孤独なガイが唯一親友と呼ぶこの男、インテリメガネのトニーがめちゃくちゃ魅力的なんです。
ちっちゃいレーニンの銅像を片時も離さず持ち歩きながら、夜な夜な「資本論」とかの小難しい本を紐解くトニー。

同性愛者としてまわりから白い目で見られるガイと同じように、このトニーも共産主義者として周りから避けられているんですよ。
ふたりはお互いの思想や嗜好を認め合ってはいないものの（むしろ軽めにディスり合ってる）、憎むべき社会から疎外され除け者扱いされているという点で、分かり合える特別な存在なんですよね。

誰とも群れない奔放なガイも、親友のトニーにはめちゃくちゃ甘えられるのがとてもいい。
どれだけ甘えても常に無表情でクールに塩対応するトニーもとてもいい。
このふたりのつかず離れずな距離感がとても好き。

男が好きなことを公言しているガイは、親友のトニーも対象範囲。
彼の隙を狙ってじゃれるようにアプローチし続けます。

ベッドメイクをするトニーの後ろからそーっと忍び寄って、後ろから目隠しをしてトニーのシャツをまさぐります。

ガイ「チャーンス！」
トニ「よせよ（無抵抗）」
ガイ「今に落ちる。誰でも必ず降参する」
ト二「僕はちがう」
ガイ「変わってるな」

ああこの冗談交じりの
駆け引きが好き

ガイ「君の彼女は…差があるのか？」
ト二「何と？」
ガイ「男の子と」
ト二「比べたことないな」

とか聞いちゃうガイの表情が可愛いんです。
本当に純粋に、女の何がいいの？男とどう違うの？って思っていて、自分がトニーの恋人としての土俵に上がれないことを素直に受け入れられない！という感じ。

ガイを全力で応援したい

絵画のような美しい世界

本作の見どころは何といってもこの美しい世界観です。
美しい俳優たちやお洒落なファッションも含めて、どのシーンを切り抜いても絵画のような美しさがあってうっとりです。

映画「モーリス」でも象徴的なボートのシーンがありますね。
自らオールを握って自由な世界へ漕ぎ出せるボートは、今作でもひとつのキーになっているように感じます。

そしてフェルメールの画集に入っていても気付かないくらい、陰影も美しい。
どのシーンも耽美的で完成されたアート作品のようなんだ。

衝撃のお仕置きシーン

物語の終盤に、ある衝撃的なシーンがあるんです。
ライバルたちによって校内で同性相手に恋愛をしている証拠が持ち出され、学校のエリート幹部たちに呼び出しを受けるガイ。

ずらりと並んだ幹部たちの目の前で机に手をつくように指示されます。
そして会長（ガイの元カレ）が自分の制服から皮ベルトを外し、ガイのお尻をスパンクします（これがまた痛そう）何度も何度も…

お尻ぺんぺんだなんて子どもみたいですが、これがなんとも屈辱的なんです。
普段はちょけてばかりいるのに、この時ばかりはただ歯を食いしばって痛みに耐えるガイがおりますよ。見てられない程つらい。
好きになった相手と恋愛をしているだけなのに、こんな仕打ちを受けなきゃいけないなんて…
これ依頼ガイは将来の出世切符はもちろん、多くの希望を失い、やりきれないその怒りの矛先を自分の祖国イギリスへと向けることになるんです。

自由を夢見た孤独な”異端児”たち

当時（30年代）のイギリスは、植民地支配で領土を広げていました。
同時に同性愛者のような少数派の存在や、共産主義的な政治思想を”異端”とみなし排除しようとする考えがはびこっていました。
ガイは力で弱いものたちを押し付ける、そんな祖国イギリスに対して怒りを抱いています。

将来を約束されたエリート階級でありながら、排他的な社会に対してあらがうように奔放に自由に生きようともがき続けるんです。

そして学生時代のこの小さなスキャンダルをきっかけに大きな挫折を経験し、あまりにも多くのものを失ったガイは、後に親友トニーの影響を受け祖国イギリスを裏切り、復讐するかのようにロシア側のスパイとなるのです。

こうも簡単に自由が奪われ、個人の尊厳が踏みにじられることがあるなんて…
時代背景は今から90年も前の話ですが、今の社会にこういうことが全くないかと聞かれるとそうとは言い切れないのが、またずしんと迫るものがあります。

セクシャルマイノリティを描いた古典的な名作であると同時に、今の世の中にも通じる戒めのような作品です。

…余韻がすごい

映画「アナザー・カントリー」は配信で無料視聴可能

映画「アナザー・カントリー」は動画配信サービス「U-NEXT」で配信中です。
無料トライアル中にぜひ視聴してみてください。

▷　U-NEXTで「アナザー・カントリー」を見る

※U-NEXTは31日間無料トライアルが可能なので期間中に解約すれば料金はかかりません。

本ページの情報は2024年7月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。