北野武最新作「首」男×男の歪んだ愛憎と狂気を描くR15時代劇｜配信で無料視聴可能

こんにちは。
実写BL・メンズロマンスが大好きなアラサー会社員のricoと申します。

数ある作品の中から大人女性にもきちんとおすすめできる良作のみをピックアップしていたら、130本を超えてしまいました。
ひたすら個人的な見どころをご紹介していくブログです。(特に激推しな13作品はこちら)

今回は北野武監督最新作、映画「首」を取り上げます。

まだ見たことがない方のために詳細を省いた「見どころのみ」をかいつまんでご紹介しますが、5割ほどネタバレを含みますのでご注意ください。

戦国版おっさんずラブ?映画「首」の衝撃

映画「首」は北野武が監督・脚本・編集を手掛けた作品で、2023年11月に公開されました。
構想なんと30年。北野監督が心血を注いで育て上げた作品です。

映画が解禁された当初、「暴力と死と男色」というコピーを見て、とても興味を持っていたんですが（特に男色部分）いかんせん北野武＝「アウトレイジ」の印象が強くてですね、
あぁ、またグロいシーンが多いんだろうな、しかも戦国時代なんてアウトレイジの非じゃないほど残酷にこ〇されちゃうんだろな…さらにタイトル「首」だもの、こわいこわいって震えてたんです。
でも西島さんが演じる明智光秀見た過ぎる…あああどうしよう。。
と映画館の前をうろうろするだけの日々が続きました（はよいけ）

すると映画を観た人たちからは「思ってたほどアウトレイジじゃなかったね」とか「これまでのグロさよりむしろコメディ要素強めだったな」とか、そんな感想がちらほら聞こえてきてですね。さらにSNSでは男色濃いめの「戦国BL」とか「戦国版おっさんずラブ」というキーワードがあふれ出しまして、さらにフォロワーさんからは「ricoさんならお気に召すかと」などと背中を押されてしまい。

よおおし、と気合を入れて、
いざ！本能寺！えいやー！
と竹槍ひとつで映画館に飛び込みました。

最高だったぜ…

天下統一を掲げる織田信長は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい戦いを繰り広げていたが、その最中、信長の家臣・荒木村重が反乱を起こし姿を消す。
信長は羽柴秀吉、明智光秀ら家臣を一堂に集め、自身の跡目相続を餌に村重の捜索を命じる。秀吉の弟・秀長、軍司・黒田官兵衛の策で捕らえられた村重は光秀に引き渡されるが、光秀はなぜか村重を殺さず匿う。
村重の行方が分からず苛立つ信長は、思いもよらない方向へ疑いの目を向け始める。だが、それはすべて仕組まれた罠だった。
果たして黒幕は誰なのか？権力争いの行方は？
史実を根底から覆す波乱の展開が、“本能寺の変”に向かって動き出す―

映画「首」あらすじより

織田信長（演：加瀬亮）
羽柴秀吉（演：北野武）
明智光秀（演：西島秀俊）

男色を真正面から描いた作品

そうなんですよ。この作品はもうね、男色三昧！（すしざんまいのポーズ）

このブログを読んでくださっている皆さんは、日本には古くから男色文化が根付いていたことをご存知かと思います。
群雄割拠の戦国時代、生死の境を彷徨う時代において「忠誠心」を象徴する男同士の”契り”は大きな意味をもっていたといわれています。
でも大河ドラマや大衆時代劇では男と男の深い関係性が真正面から描かれることは結構稀で、物語の要素として軽く触れられる程度でした。

ところがですよ、「首」では男同士の権力闘争だけでなく、その裏にある男×男の愛と憎しみの物語をしっかり描いてくれているんです。いや、むしろそこが本作のメインテーマなのかもしれないってくらい濃厚に真正面から描いていたんです。

信長に仕える主要キャラ同士がふたりきりの会話の中で「お前が俺を抱いてくれたあの夜…」ってセリフが普通に出てきたり、

見つめ合った後にキスされそうになって、「今はやめろ」ってしかったり、
でも相手が愛おしくて、すぐに抱きしめてよしよししたり、

泣く子も黙る辣腕な武将たちが、イチャイチャ、いや、深い絆でつながっているんです。こういう描写が序盤から割とがっつり続きます。

思わず劇場で正座しました

明智光秀の魔性ぶり

「首」では、頭脳明晰で織田信長の家臣として知られる明智光秀を、西島秀俊さんが見事に演じています。このキャスティング、まさにぴったり。

その西島光秀がもう、もうもう、魔性なんですわな。
危険を冒してまで謀反人の恋人（武将）を匿う男らしさもあれば、
殿の前ではどれだけ殴られ辱めを受けても必死に耐えて忠誠心見せるし、
リーダーシップ発揮して家臣たちにはどっぷり愛されてるし、
上司からも部下からも同僚からも好かれちゃって。

でも一番恐ろしいのは優しい顔して残酷なことをサクッとやってしまわれるところですね。

この光秀の多面性にゾクゾクしてしまいます。

「嫉妬するな、俺はお前一途だ」

そんなモテモテの明智光秀の恋人は気が気じゃないんですよ。
誰からも好かれてしまう魔性光秀に対して恋人が嫉妬すると「嫉妬するな、俺はお前一途だ」って真っ直ぐな目で断言するんですよ。

ここ、「何食べ」のシロさんが降りてきてましたね。
嫉妬するケンジに対するシロさんのいなし方だ…！と思わず声が出そうになりました。

「殿、ずっとお慕い申しておりました…」

DV上司である魔王信長からの殴る蹴るは日常茶飯事。
年下の信長からどんなにひどい仕打ちを受けても、常に冷静でクールな態度を崩さなかった光秀。
しかし、ある日、信長から命じられた計画に失敗してしまい、信長の目の前で首をはねられそうになります（比喩ではなく言葉の通り）

光秀、ここまでか…！という絶望的な瞬間、「ずっとお慕い申しておりました…」と告白するんですね。

命惜しさに偽ったのか、それとも一世一代の告白だったのか（ここぜひ作品を見た方のご意見を聞きたい）この時の光秀の複雑な表情、そしてこの告白の真意がずっと頭から離れんのだよ。

ここもう一度みたい

魔王信長の歪んだ愛情

加瀬亮さんが演じる信長がとてもよかった。
この作品のなかで一番と言っていい程の鮮烈な印象と存在感。

破天荒な信長のイメージのさらに上をいく狂気を全身で表現されていました。
名だたる家臣たちの前での信長の振る舞いは、罵倒や暴力が日常茶飯事でありながらも、身も気もよだつその狂気に圧倒されてしまうんです。

皆の目の前で家臣の忠誠心を試したり、命を懸けて残酷なゲームを仕掛けてからかったり、そうかと思えば突然濃厚な口づけをしたり、とにかくむちゃくちゃ。でもそこがぞくぞくする。

全てを思い通りにしようとする魔王のような存在でありながらも、「どうせすべては幻よ…」と虚無顔でぼそりと口にしてしまう、その刹那的な儚さが印象的でした。

光秀の目の前で…

真昼間から、安土城の天守閣で信長が小姓の蘭丸とがっつり”致す”シーンがございます（急に）

光秀の目の前で。

いいですか、大事なことだからもう一度言いますよ、

光秀の目の前でだ。

蘭丸のヨガる声を聞きながら、その横でじっと待たされる光秀がおるんです。

「蘭丸がうらやましいか…？」と挑発的に問う信長と、目を背ける光秀の間に走る緊張感というかもうなんというか、ここセーヘキにぶっささりました。

いいぞもっとやれ

ある日信長は光秀にある人の暗殺を命じます。
もしその計画を上手く執行できたら「お前、一晩わしに付き合え」って耳元で囁くんですよね。
殿に愛されることは、家臣たちにとっては何よりのご褒美なんですよね。

この時の光秀の表情、ぜひみて欲しい。
そしてそのミッションを完徹しようと本気で頑張る光秀を、ぜひみて欲しい。

そして本能寺へ…

日本史上最も謎めいたセンセーショナルな大事件「本能寺の変」。
明智光秀はなぜ織田信長を討ったのかという問いは500年以上たった今も解明されていない日本史の最大のミステリーとして語り継がれています。

日本人が愛してやまないこの大事件を、北野監督はどのように描くのか…？
物語の中で描かれる光秀の葛藤や信長との複雑な関係性にぜひ注目してみて欲しいです。

人間五十年　下天のうちをくらぶれば　夢幻の如くなり

敦盛

この「敦盛」は本能寺の変とセットで登場するお決まりの舞ですよね。
「人間の一生など、下天での時の流れと比べれば、夢や幻も同然だ」という意味で現代訳されています。
映画「首」はタイトルにある通り、戦国時代における権力の象徴である「敵の首」の存在が強調され、権力欲に燃える人々が異常なほどその首の価値に執着している様が描かれています。同時に、敦盛にある通り人の一生の儚さも描かれ、どれほどの偉人も死んでしまえばただの首となるあっけなさがシニカルに表現されています。

そのコントラストから感じる人間の滑稽さがタイトルバックだったり、北野武演じる秀吉の最後の台詞に込められているなと感じました。

とにかく見どころがあり過ぎて、どの角度でも語りつくしたい本作。
北野武が斬新なアプローチで本能寺に迫る「首」、ぜひ見て欲しい…！

映画「首」は配信で無料視聴可能

映画「首」は2024年5月20日より、動画配信サービス「U-NEXT」の独占配信が決まっており、無料視聴が可能です。
レンタル代（399円）が必要ですが、無料トライアルに登録すると必ずもらえる600pt（600円）でカバーできるので、実質無料で見られます。
ぜひこの機会にご覧ください。

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北野武監督「御法度」も衝撃だった

北野武出演作品「御法度」は、「首」と合わせて振り返りたい作品です。
幕末・新選組を男色の要素を強調して描いていて、その異色のアプローチが新鮮です。
この作品を見た時の衝撃は、今でも忘れられないんですよね。

男色要素が濃厚に取り入れられていて、それが物語に深みを与え、キャラクターたちの人間関係がどんどん複雑になっていくんです。歴史的なエピソードが新たな視点から描かれていて、ラストも衝撃の展開です。

▷　映画「御法度」性癖にグサグサ刺さる幕末BL

↑感想をまとめているのでぜひまだの方はご覧ください。

本ページの情報は2024年7月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。