映画「ヘルドッグス」が究極の極道ブロマンスだった

こんにちは。
実写BL・メンズロマンスが大好きなアラサー会社員のricoと申します。

数ある作品の中から大人女性にもきちんとおすすめできる良作のみをピックアップしていたら、130本を超えてしまいました。
ひたすら個人的な見どころをご紹介していくブログです。(特に激推しな13作品はこちら)

今回は映画「ヘルドッグス」を取り上げます。

まだ見たことがない方のために詳細を省いた「見どころのみ」をかいつまんでご紹介しますが、3割ほどネタバレを含みますのでご注意ください。

映画「ヘルドッグス」とは

岡田准一氏が原田眞人監督と「関ヶ原」「燃えよ剣」に続き3度目のタッグを組んだ本作は、フィルムノワールとブロマンスが融合した作品です。
深町秋生氏の小説「ヘルドッグス 地獄の犬たち」を原作とし、2022年9月に公開されました。

守るべき人達が目の前で殺される事件を阻止できなかったことから闇に落ちた元警官・兼高昭吾（岡田准一）は、復讐のみに生きる男となります。
その獰猛さから警察組織に目をつけられた兼高は、関東最大のヤクザ組織「東鞘会」への潜入捜査を強要されます。
兼高のミッションは、若きトップ・十朱（MIYAVI）が持つ秘密ファイルの奪取。
警察はデータ分析により、兼高との相性が98%という東鞘会のサイコパスなヤクザ・室岡秀喜（坂口健太郎）に白羽の矢を立て、二人が組織内でバディとなるよう仕向けます。
バディとなった二人は猛スピードで組織を上り詰めますが、互いの秘密が明るみに出たとき、彼らの関係は予期せぬ方向へと向かっていきます。

あらすじより

極道の世界を舞台に、秘密を抱えた兄貴と舎弟との絆を描き、バイオレンスアクションの中と美しくも切ないバディの関係性が話題となりました。

公開から数年たった今、初めて見てみたら、兼高（岡田准一）と室岡（坂口健太郎）のバディの絆、会長（MIYAVI）と幹部（北村一輝）の主従の絆にやられてしまいました。

大変良かったです

潜入捜査官と若手組員の師弟関係

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兼高（岡田准一）

警察であることを隠し、指定暴力団員として東鞘会への潜入捜査中。
かつては正義感に燃える新米警官だったが、ある事件を阻止できなかった罪悪感から組織を離れ、闇に生きる男へと変貌する。

殺しのプロとして手際よく任務をこなしながらも、秘密を抱え続ける孤独と葛藤を抱える。

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室岡（坂口健太郎）

指定暴力団員として東鞘会の組員。兼高のバディ。
宗教団体の教祖の息子として生まれた室岡は、カルト集団で過酷な少年時代を過ごした過去を持つ。
父親は集団の犯罪に手を染め「死刑囚の子」として生き、極道の世界に自分の居場所を見出している。

色白で爽やかな外見と人なつっこい見た目だが、内面に狂気を宿した複雑な人物。
兼高を「兄貴」と慕い、その承認を強く求める依存的な一面も。

嘘から始まる師弟の絆

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作品の鍵となるのが、兼高（岡田准一）と室岡（坂口健太郎）の関係性なんですよね。

警察官の兼高のミッションは、組員の室岡に近づき、兄貴分として室岡の信頼を勝ち取り、組の秘密を暴くことです。
そんなことを知らない室岡は、兼高の思惑通り彼を慕い、深い絆を築いていきます。

極道の世界という血まみれの環境で、互いの背中を任せ合いながら、残酷な仕事をこなす二人。
返り血を浴びて地べたをはいつくばりながらも、ふたりの関係性が純粋で眩しいんですよね。

特に印象的なのが殺しの任務ののために二人が現場に潜入するシーン。
緊張感漂う空気の中、誰もいない建物のなかでふたりがふざけて追いかけ合ったり、プロレスごっこのように殺人術を練習し合うんですよ。
取っ組み合いながら「こう、じゃなくて、こうだぞ」「あ！できた！こう？」「ちげぇよ。笑」
ふたりの何気ないやりとりに、過酷な運命に翻弄される二人の儚い友情が垣間見えます。

「俺を選べよ…」

劇中では兼高のために仲間を殺し、雨の中で取り乱す室岡を、兼高が抱きしめるシーンがあります。
普段は感情を表に出さない兼高が見せる優しさが痛いほどあふれていて、好きです。

そして物語の終盤、追い詰められた室岡が、兼高の目の前で兼高の愛人に銃を向け「俺とこの女、どっちが大事なんだよ！！」と叫ぶシーン。自分の存在価値を確かめ、兼高に選ばれることの渇望する悲痛な展開でした。

物語の終盤は怒涛の展開なんですが、作品のラストシーンでは二人が初めて出会った場面が映し出され、「あぁ…こうして彼らは出会ったんだな…」って胸がぎゅっと締め付けられました。

十朱と土岐の主従関係がぶっささった

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十朱/会長（MIYAVI）

東鞘会の若きトップとして組織を率いる。
冷静沈着な判断力と予測不能な危険性を併せ持つカリスマ的存在。
芸術に造詣が深く、自らも絵を描くなど、暴力と美学が奇妙に共存する人物。

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土岐（北村一輝）

東鞘会の最高幹部の一人で武闘派の組長として知られる。
組織内での権力闘争に長けており、冷徹な決断も躊躇わない。
組織の掟を重んじる古風な一面と、自身の欲望に忠実な現実主義者の二面性がある人物。

私の性癖にぶっささったのは、この組の若き会長・十朱（MIYAVI）と、幹部である土岐（北村一輝）の主従関係。表面上の主従関係を超えた複雑な力学を孕んでいて、もう色気が大変なことになってました。

それが如実に表れるのが、組織の重要な幹部を失った後の「ケジメ」のシーン。
会長である十朱の判断ミスによって、敵対する勢力に幹部のひとりが殺害されてしまった日の翌日。
土岐は兼高同席のもと、会長である十朱を誰もいない部屋へ呼び出します。
突如土岐は何も言わずに会長の腹部に強烈な一撃を見舞い、会長はその場にうずくまり吐いてしまいます。

驚いて止めに入ろうとする兼高に対し会長は「…黙って見てろ…（ゲホゲホ）」と冷静に命じます。
普段はカリスマ的な存在感を放ち、鋭い眼差しで組織を支配している会長の姿はどこにもなく、土岐の前では従順な男に変貌しているんですよね。
まるで主従関係が逆転したかのような演出に、思わず一時停止してしまいました。

土岐は厳しい眼差しで会長を見下ろし、声に怒りを滲ませます。
「あなたが立場を忘れて出しゃばったせいで仲間が死んだ。そのこと自覚してらっしゃいますか？」あくまでも敬語で攻め立てる土岐、とても良かったです。

嘔吐しながらも、会長は毅然と受け止め「…わかってる（ゲホゲホ）」とこぼします。
この口調が叱られた子どもみたいなんですよね。威厳を持つ十朱が、土岐の前ではこんなにも素直で脆い姿を見せるギャップがたまらない。

「トップ自らが現場に赴くなんぞ言語道断です」と土岐が叱責を続けます。
表面上の主従とは別に、組織の秩序を守るための無言の掟が存在しているんですよね。

うずくまりながらも十朱は「ここで誰かが絞めてくれなきゃ、仲間に合わせる顔がねぇ…もう一発もらおうか」自ら罰を求める十朱に、土岐は再び会長の腹部を強打。

痛みで倒れ込む十朱を尻目に、土岐は懐から刀を乱暴に取り出し、その場で会長を殴った自らの指を詰めようとします。
「よせ、やめろ！今どきえんこづめなんて流行らねえよ」と制止する会長の言葉を聞かず「こっちはこっちでケジメつけなきゃ道理が通りませんよ」と自らの責任を取ろうとします。

刀を指に押し付ける土岐に対し、焦った十朱は声を荒げて「親の俺が止めろって言ってんだよ！」この瞬間だけは会長としての威厳を取り戻すんですよね。
組織の統制を守るための共犯関係とも言える二人の絆がクソでか過ぎて完全に沼りました。

本格バイオレンスの美学

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岡田氏と言えばアクション。今回もキレッキレの格闘が楽しめます。
単なるバイオレンスな描写だけでなく、キャラクターの内面を映し出す演出も果たしていて、岡田准一と坂口健太郎が披露する格闘シーンは、通常の殴り合いとは一線を画した独特の動きが特徴的です。

冒頭の養鶏場での兼高の動きからは、その獰猛さと冷徹さが伝わってくるし、廃墟と化した植物園の場面では、銃を使わずに「小道具」だけで敵を殺害する二人の息の合った連携が見事に描かれています。

レストランでの急襲シーンでは、兼高が女刺客を取り押さえるアクロバティックなアクションが展開され、続く銃撃戦では十朱や土岐を含めた組織の面々の戦闘スタイルの違いが浮き彫りになり見ごたえ抜群でした。

原作と映画「ヘルドッグス」の魅力

深町秋生氏の原作小説「ヘルドッグス 地獄の犬たち」は、映画版とは異なる部分も多いものの、闇に堕ちた人間の救済と絶望というテーマを深く掘り下げています。原田監督は「フィルム・ノワール」の世界観を重視して脚色を加え、1950年代のハードボイルド映画へのオマージュを随所に散りばめました。

原作では更に詳細に描かれる室岡のバックグラウンドや、兼高の過去の葛藤は、映画では余白として残されることで、観客に想像の余地を与えています。

また、「アリチアの森」という兼高が冒頭で呟く言葉は、「地獄の黙示録」のカーツ大佐の愛読書からの引用とされ、映画と原作を繋ぐ重要なモチーフとなっています。

映画では原作の魅力を継承しながらも、原田監督独自の映像美学と、岡田准一氏をはじめとする俳優陣の圧倒的な演技力によって新たな命を吹き込まれた作品となっています。

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映画「ヘルドッグス」は配信で視聴可能

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映画「ヘルドッグス」は動画配信サービス「Netflix」で配信中です。

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本ページの情報は2024年7月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。